上海博邦知識産権服務有限公司
新規事業部
部長 周逸宁
2018年3月 15日

中国最大の E コマース・プラットフォーム運営グループ企業アリババは2015 年より、プラットフォームの運営過程で生じた知的財産権関連問題およびその対策につき、年度報告書のかたちで情報発信を行ってきた。その最新版が1月 10日、「2017 年アリババ知的財産権保護活動年度報告書(以下『年報』」という)」として公表されている。今回の「年報」はこれまでのものと比べ、アリババグループにおける知的財産権保護業務のおおきな節目となる可能性がある。

BOB はアリババによる知的財産権保護業務の協力者であり、同社の知的財権保護システムの利用者としての立場から、この「年報」を考察する。

「年報」は四つの部分で構成されている。まず、2017年度のアリババ知的財産権保護関連部門の業務成果が紹介される。つぎに、業務遂行過程での中国政府関連部門をはじめとした様々な外部組織との協力関係が述べられ、越境Eコマースにおいて模倣品の取引が増えた事実に言及したのち、 2018年度の業務の方向性が語られる。以下に述べる業務実績を概観すれば、アリババの昨年度の知的財産保護業務が「歴史的な成果」を収めたことを理解できる。

アリババグループの知的財産保護チームは 2017年、BOBを含む協力会社と検複数回にわたる検討会を行った。そこでは、Eコマース・プラットフォーム上での知的財産保護に関する運用規則や、侵害行為排除申立てのためのシステムの機能改善などが検討された。そして、それらに関するいろいろな課題が解決に至った。このような活動により、当社のような権利者の代理人として侵害行為排除申立業務を行う会社は、よりスムースな業務遂行が可能となった。その結果、申立てから侵害品情報掲載 URL削除までの時間が大幅に短縮される。大量なアクセスが行われる Eコマース・プラットフォーム上での権利保護においては、いかに短時間で侵害品を見つけ、侵害品情報掲載 URLを削除することが重要になる。

したがって、このような改善活動は権利者保護と同時に、Eコマース・プラットフォームを利用する消費者の侵害品購入リスク削減をとおして、彼らの利益保護を達成することになる。

中国最大の Eコマース・プラットフォームを運営し、おおくのアクセスを集め、商品販売の仲介を主要事業としていた以前と異なり、現在のアリババグループは高水準のIT 技術力を中核とした事業を展開する企業となった。「年報」には、アリババグループがIT技術によるソリューションを活用した権利保護に関する紹介もなされている。侵害品情報掲載 URL自動検知技術、画像識別技術、侵害行為関連データ分析の数理モデルなどの技術を使い、知的財産保護体制の効率化および公正化を向上させる施策も紹介されている。かつてはアリババ関係者の知り合いをとおして、他社より早く侵害品情報掲載 URL 削除が可能であることを強みとする BOBの同業者がいた。しかし、「年報」で述べられているような知的財産保護業務の高度的な IT 化とプロセスの標準化により、権利保護業務の「属人性」および、不公平さも改善されたと考えられる。また、このような改善はE コマース・プラットフォームにおける知的財産保護に前向きなアリババグループの姿勢を示している。誠実なビジネスこそが世の中に受け入れられるはずである。

「年報」にはアリババグループ知財保護チームと当局との協力についても紹介されている。BOBも昨年度、同知財保護チームと当局との共同プロジェクトに参加する機会があった。プロジェクトは多大な成果をあげた。このようなプロジェクトは本年度においても、知的財産権者にとって期待できるものになるであろう。

「年報」では「海購」、「海淘」といった、このごろ中国で活発化している海外サイトでの購買活動に伴い、模倣品流通も増加した事実に言及し、近年徐々に増えてきた侵害品のクロースボーダー流通問題も今後対応しなければならない大きな課題としてあげている。国境を超えた犯罪への対処は元来、それ以外のものより困難なことはあきらかである。アリババグループが提供するクロースボーダーE コマース・プラットフォームは、異なる行政制度と法律の下に置かれる各国のマーケットを結果的につなぐこととなった。そのために、アリババグループにはこのビジネス態様に内在する国境を超えた知的財産侵害に対処しなければならない義務があると考えられる。高度な IT技術を持ち、十分な資金力を誇るアリババグループが、本年度の知的財産保護業務をとおして権利者や関係者が満足できるような成果をあげることができると信じている。

 

以上

関連情報リンク:
『2017 年アリババ知的財産権保護活動年度報告書』発布
https://ipp.alibabagroup.com/infoContent.htm?spm=a2o2l.8248579.0.0.31cf747b9605OH&skyWindowUrl=news-20180110-cn